婿養子のウソとホント
婿養子というとどんなイメージがありますか?
結婚して、妻の名字にすると、婿養子になった、とよく言われますが、本当に婿養子でしょうか。
実は、相続にも関わってくる婿養子。ホントの婿養子とはどんなものでしょうか。
1.戦前の家制度があった頃のホントの婿養子
旧民法では、家長がすべての財産を継ぐという「家」制度がありました。
たいていは、その家の長男が「家」を継ぎ、二男以下は長男の戸籍に入る、という形になっていました。
そのため、古い戸籍謄本を取ると、長男を初めとして一族が一つの戸籍にずらっと出てきます。
そして、二男以降の中には、結婚して婿養子に行く子もいました。
「家」を継ぐことが重視されていた時代、特に男子承継を主としていた時代だったため、例えば、娘しかいない家は、娘の結婚相手=婿を養子に迎え、婿がその家を継ぐことがありました。
これが婿養子です。
古い戸籍を見ると、この婿養子はよく出てきます。
家を継ぐために、娘の婿が、結婚と同時に、娘の両親と養子縁組します。養子縁組を行うので、その家の子供になり、家を受け継ぐことになります。
この「家」制度があった時代、婿養子といえば、妻の両親と養子縁組をし、まさしく養子になることでした。
2.現在における婿養子と名字の選択
戦後、民法が改正されて「家」制度がなくなりました。相続は、家長がすべて継ぐのではなく、配偶者や子供がそれぞれもらうようになりました。
それでも、やはり、家を継ぐといった慣習はなかなかすぐにはなくなりません。今でもご年配の方にとっては、「長男が家を継ぐべき」という感覚の方もいらっしゃいます。
結婚後、妻の名字になるだけで、婿養子になった、言われることがあります。
では、現在において、妻の名字になっただけで、婿養子でしょうか?
これは、ウソです。
現在では、妻の名字になることと、婿養子になること、は実は別のことなのです。
旧民法時代と同様に、婿養子というのは確かにあります。
方法としても以前と同じで、婿が妻の両親と養子縁組を行うことです。そうすることで、婿が妻の両親の子供となり、妻の両親が亡くなった時には、婿は相続人になることができます。
これは、「嫁が遺産をもらうには?」のブログにも書いてありますが、嫁の場合と逆パターンになります。養子縁組することで相続にも関わってきますので、例えば、妻の実家の家業を継ぐ、などの場合は、有効な手段と言えるでしょう。
その一方で、現在では、両親と養子縁組はしないけど、婚姻時に妻の名字を選ぶ、ということができます。
現在の民法では、結婚をすると、それまで入っていた親の戸籍から抜かれ、新しい戸籍が作られます。その際に、夫の名字を選べば、夫が戸籍の筆頭者、妻の名字を選べば、妻が戸籍の筆頭者になるだけです。
この場合は、「家」に関係なく、名字を選ぶのみで、妻の両親との関係は、特に何も変わりません。当然、相続に関しても、婿は相続人にもなりません。
都合上妻の名字を選んだ、だけであれば、それは実質の「婿養子」ではないのです。
3.婿養子になったからといって、実の両親との縁切りでもない
養子には、特別養子縁組と普通養子縁組というのがあります。
特別養子縁組には年齢制限があり、子供しかできませんが、普通養子縁組はそういった制限がありません。実質の婿養子をする場合は、この普通養子縁組に該当します。
婿養子などを含め、養子になると、実の親との関係が切れるような気がしますが、普通養子縁組の場合は、実は、つながったままになります。
当然、相続人にもなりますので、婿養子になったからと言って、実の両親と縁が切れる、相続人になれない、というわけではないのです。
4.まとめ
実質の「婿養子」は、現在でもすることが出来ます。
その一方で、単に妻の名字にする、ということもできます。
婿養子は、相続に大きく関わってきます。