相続人がいっぱい!収集つかないから調停行きの事件
相続で争ったら、まずは、家庭裁判所に遺産分割の調停申立をしますが、実は、争っていなくても調停申立をするケースがあります。
それは、遺言さえあれば、調停申立に至らないようなものですが、遺言がなければ、収集がつかずに調停申立になります。
どんなケースか、ご紹介します。
これは実際にあったケースをアレンジしたものです。
1.生涯独身で亡くなった人の相続発生
太郎さんは、生涯独身で、最後は老人ホームに入って95歳で亡くなりました。
遺言はなく、亡くなった時の預貯金は3000万円ありました。
太郎さんは六人兄弟の長男でした。太郎さんが亡くなった時、健在の兄弟姉妹は、妹の次女と弟の四男でした。
そして、亡くなった兄弟姉妹のの子供(甥姪)は、12人でした。
さらに、太郎さんは、実は幼い頃に養子になっていて、産みの親側の兄弟姉妹もいました。実の兄弟姉妹で、健在の兄弟は1人いて、亡くなった兄弟姉妹の子供(甥姪)は、10人いました。
生涯子供がいなかった場合、相続人は、親または兄弟姉妹または甥姪になります。さらに、太郎さんは普通養子であったため、養子前の兄弟とも相続関係は切れません。
なので、太郎さんの相続人は、下記の通りになります。
養子前(実)の兄弟 1名
養子前(実)の甥姪 10名
養子後(義理)の兄弟 2名
養子後(義理)の甥姪 12名
相続人の合計 25名
2.相続人が20名以上になると、争いがなくても遺産分割協議書の作成は難しい
太郎さんは、生前、姪っ子の花子(相続人)にお世話になっていました。通帳などを預けていました。
太郎さんが亡くなったあと、花子は相続手続きをしようとしましたが、相続人を確認する作業だけでも大変だったので、弁護士に依頼しました。
そこで、弁護士は相続調査を行い、相続人を特定して、花子さんの代理で、各相続人に遺産分割に関して連絡をしました。
ところが、相続人の中には、太郎さんを全く知らない、自分はいらない、関わりたくないなどという人もいたり、なかなか連絡が取れない、といった相続人もいました。
相続人の間で争いがない場合は、遺産分割協議書を作成して相続手続きを進めるのですが、相続人の人数が多い場合、例え争いがない場合であっても、全員から署名捺印、印鑑証明書をもらうことが難しいことがあります。
人数が多ければ多いほど、全員の署名捺印を揃えるのはハードルが高くなります。
そこで、花子さんは、弁護士と相談して、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることにしました。
3.調停調書は、遺産分割協議書と同じ役割をしてくれる
調停日に全員が揃うというわけにはいきませんでしたが、裁判所の調整のおかげで、遺産がいる人、いらない人、それぞれの法定割合などを整理し、すんなり分け方が決まりました。
お世話をしていた花子さん以外は、疎遠で、ほとんど知らない人が多かったので、特にもめることもありませんでした。
そして、分け方を書いた調停調書が作成され、通帳を預かっていた花子さんが通帳を解約して、調停調書の通りに分けました。
こうして、それぞれ、太郎さんの遺産をもらい、遺産分割は終了しました。
おしまい。
4.まとめ
実は、太郎さんが花子さんにすべてを相続させる、などの遺言があれば、こんな大変なことにはならなかったケースです。
パラリーガルとして、こういうケースに遭遇すると、一言の遺言さえあれば、と思ったことは数知れません。
一言でもいいから、とりあえず遺言を書いておこう、という方は、自分で書ける遺言の書き方を紹介した、こちらの記事をご参照下さい。