子の心親知らずな遺言が悲劇を生む

自分の死後、相続でもめないために遺言を書くケースが多いですが、遺言があることによって、逆に争いを生むケースがあります。

本来、争いを防ぐはずの遺言が、火種になる、というのはどういうことでしょうか。

1.親の思いと子の思いは違う

できの悪い子ほどかわいい、なんて言葉がありますが、兄は、定職につかずにふらふらしていて、今後も心配だから、多めにお金を残してやろう、とするケースがよくあります。

あるいは、長男で跡継ぎだから、不動産一式と預貯金を残して、弟には預貯金を少しだけ分ければいい。

実際に、そういった遺言が作成されることは、よくあります。

その親の意思に子が納得している場合であれば、特にもめることもなく、遺言通りに実行されるでしょう。

しかし、親の心子知らず、その逆の、子の心親知らず。

親が思っている通りに、子供が納得しているとは限りません。

生活が不安定な兄に多くを残してやり、しっかりしていて生活も安定している妹には少しだけ残したとします。

でも、親の面倒を実際に見ていたのは、妹。

妹もお金目当てで親の面倒を見ていたわけではないでしょうが、親が亡くなった時に、面倒を見ていた自分には少ししか入らず、面倒を全く見なかった兄には多く入った、となれば、妹は腹立たしくなります。

それまで、兄とは特にもめてはいなかったとしても、遺留分が侵害されていれば、妹は遺留分を兄に請求し、もめることになるでしょう。 争いを防ぐはずの遺言をきっかけに、兄弟姉妹が絶縁してしまった、というのは、実は、よくある話しです。

2.不平等な内容で遺産を分けるときの注意点

子供が2人以上いた場合、どちらか一方に多めに残す、という遺言を書くことがあります。

もちろん、それは様々な理由から遺言者が必要と思って分けているのですが、子供達にとっては、それが良いとは限りません。

先の例のように、親にとっては良いと思っても、普段面倒をみている妹からすると、腹立たしい限りです。

そうしたことから、遺言をきっかけに余計に争いを生んでしまう、というのは悲しいことです。

そうならないために、不平等で分ける場合は、もらう予定の子供たちが、それに納得していることが一番です。

前の例でいうと、実際に何かと面倒を見てくれる妹の方に多めに預貯金を残しておく。

兄の方は住むところに困らないように家を残しておく。

そうすることで、兄も妹もそれぞれ納得していれば、争いを防ぐ遺言になります。

長男が家業を継ぐ場合、事業所などの不動産を全部長男に残すことがあります。家業を継ぐため、兄が全部もっていってしまうことに、他の子供たちが納得していれば問題ありませんが、自分の分け前を、と思っている子供がいる場合は、それが争いのタネになります。

家業を継いだ長男に、遺留分として請求する、というケースもあります。しかし、この場合、不動産を継いだものの、長男は現金が準備できない、などの事情も発生したりするため、生前に他の子供たちへの配慮も考えておく必要があります。

3.子の心知らずで使われない遺言

自分が亡き後、長男にこの家を継いで住んで欲しい、と親は思い、遺言に書いたとします。

長男に1500万円の不動産、二男に800万円の預貯金。でも、長男はすでに自分で建てた家があり、実家に住むつもりもなく、実家は売って現金にしたいと思っていました。

弟は、自分の家を建てたばかりでお金がなく、兄の方が多いことに少し不満がありました。

弟の思いに気づいた兄は、不動産を売って現金化した上で、半分に分けよう、と弟に提案し、弟もそれに賛成しました。結局、不動産は1200万円で売却でき、1200万円と800万円の預貯金の計2000万円を二人で折半しました。

というように、せっかく書いた遺言が使われない、というケースもあります。

遺言があったとしても、相続人以外に受遺者がなく、すべて相続人で分けるように指示されている場合、相続人同士が違う分け方をしたいと思い、全員がそれに納得すれば、遺言とは別の分け方をすることも可能です。

でも、せっかく書いた遺言が使われないのは寂しいですね。

そうならないためにも、書く前に、子の思い、も探っておく必要があります。

4.まとめ

相続争いを防ぐために書く遺言ですが、時として、その遺言が争いのタネをまくことになる場合があります。

せっかく書くなら、残す側、もらう側、双方の気持ちが通じる遺言が理想的です。

遺言を書く際には、残される側の思いも考えながら書くと、もめない遺言になります。

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