遺言は「ゆいごん」か「いごん」か
「遺言」はどう読みますか?
「ゆいごん」? 「いごん」? 「いげん」?
どのような違いがあるのでしょうか。
1.「遺言」の読み方によって、意味に違いがある
ネットの辞書で調べると、「遺言」は、「ゆいごん」、「いごん」、「いげん」という読み方が出てきました。
「いげん」という読み方は、私も聞いたことがなかったので、知らない人も多いと思います。一般的ではないですね。
辞書によって意味の解説の仕方は違うのですが、違いが分かりやすかったデジタル大辞泉での解説を見てみましょう。
「ゆいごん」は、死後のために言い残しておくこと。また、その言葉。法律用語では「いごん」と読む。
「いごん」は、人が、死亡後に法律上の効力を生じさせる目的で、遺贈、相続分の指定、相続人の廃除、認知などにつき、民法上、一定の方式に従ってする単独の意思表示。
「いげん」は、死にぎわに言葉を残すこと。また、その言葉。いごん。ゆいごん。
「ゆいごん」と「いごん」は、どちらも死後のために残した言葉で、普段使われない「いげん」は、死後のこと云々より、とにかく死に際に残した言葉のようです。
つまり、「いげん」と読む場合は、ドラマなんかで死の淵にいる登場人物が、主人公に最後の力を振り絞って言う言葉、のようなイメージでしょうか。
では、「ゆいごん」と「いごん」はどう違うのでしょうか。
死後のために残しておく言葉、という点では一致していますが、「いごん」が法律用語、という点が大きく異なります。
民法には「遺言」と書いてある項目がありますが、すべて「いごん」と読みます。法律的に有効な「遺言」は、正式には「いごん」と読みます。
法律的に有効な遺言が「いごん」で、法律的に有効ではなくても、死後のために残しておいた遺言は「ゆいごん」となります。
2.実際の呼び方は、区別されていない
法律的に有効な遺言とそうでない遺言には、読み方の違いがあります。
正確に言おうとするなら、法律に定められた方法で書いた遺言は「いごん」で、特に法律的に有効じゃないけれど、書いた遺言は「ゆいごん」です。
しかし、実際は、どうでしょうか。
法律的に有効であっても、「ゆいごん」と呼んでいませんか?
法律の専門家である士業(弁護士や司法書士や行政書士)には、「いごん」と言う人がいますが、「ゆいごん」と言う人もいます。
実際、私も話をするときは「ゆいごん」と言っています。
なぜでしょうか。
「いごん」という読み方よりも「ゆいごん」という読み方が、一般的に広まっているからです。
遺言の相談時に、「いごんは・・・・」と話しても、ピンとこない人が多いからです。
士業であれば、すぐに「いごん」=「遺言」となりますが、普通は、「?」となります。
相続の手続きで、銀行などに行ったときも、おそらく、銀行の担当者であれば、法律用語で「いごん」と読むのは知っているでしょうが、「ゆいごんはありますか?」と聞かれます。
それに「いごん」より「ゆいごん」の方が聞き取りやすい、という点もあります。
どう読んだらいいか迷った時は、違いを知った上で、「ゆいごん」を使ってはいかがでしょうか。
3.本当は「ゆいごん」よりも「いごん」が必要な理由
「ゆいごん」は法律的に有効でないものも含まれています。
例えば、残された家族への感謝の気持ちを綴った手紙も「遺言」になります。
そういった「ゆいごん」も大切ではありますが、やはり、法律的に有効な「いごん」も必要です。
思いだけではなく、財産関係が絡む場合は、法律的に有効な「いごん」を残しておかないと、その思いを実現することはできません。
「ゆいごん」とともに「いごん」の遺言を残されておくことをおすすめします。
4.まとめ
遺言は、読み方によって意味が違いますが、実際に使われているのは「ゆいごん」という読み方です。
本来の意味の「ゆいごん」だけでなく、法律的に有効な「いごん」の遺言も残しておかれると良いでしょう。