子供に迷惑をかけない遺言
相続で子供には苦労をかけたくない、そう思う方は多くいらっしゃいます。
終活の一環として遺言も注目されているところですが、遺言があったせいでもめてしまった、というケースも少なからずあります。
どうしたらよいでしょうか。
もめずに感謝される遺言の書き方をご紹介します。
1.誰かに全部をあげる遺言も有効
相続人予定の子供Aと子供Bがいたとします。
子供Aは、近くに住んでいて、病院の送り迎えなど何かと身の回りのことを手伝ってくれます。ところが、子供Bも近くに住んでいるものの、来る度にお小遣いをねだり、家でご飯を食べ、何もせずに帰って行きます。
そこで、Xさんは、子供Aに遺産全部を相続させる、という遺言を作成しました。
遺言は、遺言を書く人が分け方を自由に決められるので、子供Bも相続人ですが、子供Aに全部をあげる、と書くことも可能です。
すべてあげると書いたからといって、遺言が無効になるわけではありません。
公正証書遺言あるいは、法律的に有効な書き方にのっとって書かれた自筆遺言であれば、その遺言は法律的には有効な遺言となります。
ただし、全部をあげるとした場合、大きく問題になることがあります。
それが遺留分です。
2.配偶者、子供には、遺留分がある
民法で、相続人が配偶者あるいは子供だった場合、遺留分、というものを持っています。
これは、最低限、遺産をもらえる権利です。遺言などによってもらえなかった場合は、遺留分に該当する金銭を遺産をもらった人に請求することができます。
これは法律で決められた権利であるため、遺言で子供Aにすべてをあげるとしても、子供Bは子供Aに遺留分を請求することができます。
この遺留分は、遺留分をもっている子供Bが請求しなければ、遺産は遺言通りすべて子供Aに相続されます。もし、子供Bが、これまで親のXからいろいろと援助してもらったし、自分は遺産はいらない、と思っていたら、遺言通りすんなり相続が行われるでしょう。
ところが、子供Bが、なぜ自分だけもらえないんだ、おかしい、と思うのであれば、当然、子供Aに遺留分を請求するでしょう。
生前にXから援助を受けていたなど特別な事情がある場合は、それらも含めて争いに発展する可能性が高くなります。
親としては、よくお世話をしてくれる子供Aにたくさん残してやりたいと思ったのかもしれませんが、お金だけでなく、問題も残してしまうことになります。
子供Aも、もめるなら法定相続通りでいい、と思うかもしれません。そうならないために、遺留分をどうするのか、遺言を書く前に考えておく必要があります。
3.もめる原因は遺留分だけじゃない
遺留分を考えて分け方を決めていたとしても、生前に子供Bに対して住宅資金の多額の援助をしたり、これまでもお金を渡したりしていた場合、子供Aは、多めにもらっても不満に感じる場合があります。こういった場合は、子供Bに対して遺留分があったとしても、特別受益があったから、遺留分はすでにない、と子供Aが争うかもしれません。
相続争いになる原因は、生前、子供Bだけ援助してもらった、自分だけお世話した、といった不平等感に大きく起因します。
なるべく争いがなく、もめごとがないようにするためには、子供A、子供Bの不公平感を少しでも和らげるような分け方を書くと効果的です。
親の心子知らずで、せっかく書いた遺言で争ってしまう子供たちもいますが、親の最後の小言、だと思って、諭すように書く、というのも一つの手かもしれません。
最後に、付言として、分け方の理由を書く、という方法もあります。
親の思いを知れば、残された子供も、親の心に気づき、もめずに相続するはずです。
4.まとめ
遺言はもめないために書くものですが、書き方によっては、余計に争いを生むこともあります。
遺留分、生前の援助などを考えて、もめる可能性が低そうな分け方で書くのをおすすめします。