壮絶な相続争いが行き着く先は最高裁?!

2時間ドラマのように、相続争いは、お金持ちだけのものだと思っていませんか。
自宅と多少の預貯金だけの、ごく一般的な遺産であっても、争うケースはたくさんあります。
お金だけでは済まない相続争い。
相続争いで争ってしまったら、どうなるのか。
ちょっとシミュレーションしてみましょう。
1.はじまりは、もちろん、相続発生。
かつては仲の良い兄弟がいました。幼少期はよく一緒に遊んでいました。
父は10年前に他界し、母は保険金の受取と自宅の土地建物を相続し、兄弟は預貯金を半分ずつ分けました。父の相続の時は、何一つもめることなく終わりました。
その後、母は、年金、父の保険金などで生活していましたが、兄夫婦が生活が苦しいということで、同居を始めました。
ところが、同居後、母と兄嫁がうまくいかず、母は父の生命保険で介護付き施設に入り、兄一家は、そのまま実家に住み続けていました。
施設に入ってしばらくして、母は体調を崩し、亡くなってしまいました。
母の遺産は、古い自宅建物と土地、預貯金2000万円でした。自宅は2000万円程度の価値でした。
2.遺産分割の合意ができそうに見えて、とんでもない問題が出てくる
兄は、引き続き自宅に住みたいので、自宅を希望し、弟は、家はいらないので預貯金を希望しました。それぞれ納得したので、その通りにしようと、弟が兄に、母の通帳を渡すように言うと、兄は渡すのをしぶりました。
その時、弟は、同居していた兄が、母のお金を使い込んでいたのではないか、と疑いました。そういえば小さい頃、兄は、お小遣いがなくなると、母からお小遣いをせびっていました。
弟がしつこく通帳を要求すると、2千万円の定期預金の通帳だけを渡しました。他の通帳について聞いてみましたが、「ない」と言い出しました。
そのうちに、「自宅は古くて、実際には2千万円もしないから、預貯金もよこせ」と言ってきました。
弟は、兄にますます不信感を抱いていきます。
一方、兄の方では、兄嫁が、「こんな古い家と二千万なんて、不公平すぎるわ」と言い、兄は確かにそうだと思いました。さらに、兄嫁は「嫌々同居してお母さんの面倒見たのに、こんな家だけってひどい」とも言いました。
そんなわけで、結局、兄、弟、それぞれ弁護士に相談することになったのです。
3.双方に弁護士がついて、家庭裁判所へ調停申立
兄、弟それぞの弁護士は、調停申立を勧め、弟が、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てました。
遺産分割で争いが起きた場合は、いきなり裁判にはならず、まずは、調停から始まります。
これは法律で決まっていて、どちらかが調停を申し立てすることになります。
調停申立は自分ですることもできますが、複雑な相続争いの場合は、弁護士に依頼することも多くあります。
また、調停申立は自分でしたけれど、途中から大変になって弁護士に依頼した、というケースもあります。
さて、兄と弟は、それぞれ双方の弁護士とともに調停をすることになりました。
調停で、弟は、兄に母の預貯金をすべて出すように求めました。
そこで、兄は母の普通預金の通帳を一つだけ出しましたが、残高は0円でした。
その預金通帳には、母が具合が悪くなる前から、毎月何十万円も引き出されていて、弟は、何に使ったのかと兄を問いただしました。
すると、兄は、母の施設代や生活費など、母に言われるままに出しただけだと主張し、弟は、そんなに必要ないはずだ、何に使ったのかとしつこく聞きました。
さらに、兄の方は、自分が同居してお世話したのだから、もっともらってもよいはずだと預貯金からさらに分けるように主張しました。
こうして、調停では兄と弟の主張は平行線をたどり、結局、調停は不調に終わってしまいました。
兄と弟は、調停で精神的にお互い疲弊しはじめていました。
裁判所で調停をやることによって、第3者の目ができ、それによって双方歩み寄りをして和解するケースもたくさんあります。
調停は月に1回程度のペースで進められるため、複雑な事案については、終了までに年単位かかることもあります。
代理人として弁護士を頼んでいたとしても、本人の精神的負担はかなり大きいところです。
4.調停の後に進むべきところ
調停が不調に終わった兄と弟の遺産分割協議は、審判(裁判)へと移行します。
これはどちらかの申立が必要ではなく、自動的に審判になります。
相続なので、争いのまま分割せずにおいておく、ということができないんですね。
審判は、いわゆる裁判で、裁判官が審判(判決)を出します。
つまりは、兄にはいくら、弟にはいくら、と決めます。もちろん、審判が出るまでに、双方が裁判官の説得に応じて和解すれば、そこで話はまとまります。
でも、この兄と弟、どちらも全く譲らなかったため、ついに、審判になってしまいました。
そして・・・・兄には自宅(鑑定:1800万円)と預貯金100万円、弟には預貯金1900万円となりました。
ですが、この決定を不服とした兄が、高裁(高等裁判所)に即時抗告(不服申立と一緒)をします。
しかし、棄却(最初の審判の通り)となり、それでも気が収まらない兄は、弁護士が止めるのにもかかわらず、さらに最高裁(最高裁判所)へ不服申立をし、最後はそれも棄却されて、最初の審判が確定し、ついに、決着がつきました。
兄は自宅と預貯金100万円、弟は預貯金1900万円を相続しましたが、裁判が終わった後は、お互いに全く交流をしなくなり、絶縁状態となってしまいました。
おしまい。
5.まとめ
この兄と弟は、フィクションですが、よくある相続争いです。
一般的には、よっぽどでなければ、高裁、最高裁まで争いが続くことはありません。
とはいえ、全くのゼロかといえばそうでもありません。高裁レベルではそこそこあったりします。
遺産分割協議を発端にして、相続問題の判例が出ることがありますが、そうした判例は、最高裁に行き着く前に壮絶な相続バトルを繰り広げているはずです。
相続で争うと、弁護士費用などの金銭面と、争いの長期化、慣れない裁判手続きによる精神的な面で多くの苦労をすることになります。
生前に、争いを防ぐように対策しておき、争わない、それが一番の節約になります。
私も現在父の相続争い中です。
私が介護〜葬儀を全て、妹は二十年前の母の葬式にも来ないまま介護〜葬式全く何もせず来ないまま
はじめから弁護士たてて相続争いです。
今の法律は本当におかしく介護や仕事休んでの葬式なんてしない方の味方ですよね
白石様
コメントありがとうございます。
相続争いは、いろんな意味で本当に大変ですね。
ご心労いかばかりかと存じます。
介護などのお世話から葬儀の段取りまで、実際にやる方は大変ですが、
法律的にはなかなか考慮されないことが多いですね。
1日も早く相続争いが終結することをお祈りしております。